Snapshot とは?

Snapshot(Snapshot.org)とは、一言でいえば、「ガバナンス・トークンの投票所」です。自分が所有するトークン量に応じて、投票を行うことができます。この後の運用例でも詳しく取り上げますが、直近では「山古志村のデジタル村民」の意思決定として、投票が行われていました。
DAOに属していない方には、なかなか聞きなれない言葉かもしれませんが、ENSやDecentraland、Uniswapなどの超がつくほどの有名プロジェクトやサービスにおける意思決定でも採用されています(下記参照)。

ガバナンス・トークン とは?
「ガバナンス・トークン」とは、簡単に言うと…中央集権ではないDAOなどの意思決定には必須の「投票権がついた株式」です。この「ガバナンス・トークン」の保有者は、自分が保有するトークン量=票数として、意思決定に参加することができます。
DAOには中央集権的に意思決定を行う人物がいないため、例えば「次は、Aという行動を取るべきか、Bという行動を取るべきか、どちらがいいですか?」といった提案に対して、「ガバナンス・トークン」を持つ人は、どちらの行動が良いか投票を行います。基本的には、トークン1つ=1票として扱われます。
DAOによっては、投票権としてだけでなく、提案を起案するための権利のような使い方もできます。
ガバナンス・トークンの例
・NinjaDAO : $CNGT(NinjaDAOでの活躍や貢献に応じて配布)
・Ethereum Name Service(ENS) : $ENS(運営をDAO化した際にAirDropで配布)
・STEPN : $GMT(共存する $GST はユーティリティ・トークンという位置付け)
ガバナンス・トークンには、分散型取引所で売買できるものもありますね。
「ガバナンス・トークン」の入手方法はプロジェクトやDAOによって様々ですが、中には分散型取引所でのスワップによって入手できるものもあります。続いては、DAOでのガバナンス・トークンがどんな役割を持っているのか、具体例を見ていきましょう。
DAOにおけるガバナンストークンの運用例

山古志村が発行する「Colored Carp」「NISHIKIGOI」は、山古志村のデジタル村民であることを示す「デジタル住民票」も兼ねるNFTコレクションです(リアルな住民票やマイナンバーとの連携はありません。あくまで、デジタルの世界での住民票です)。
Discrodのコミュニティでは、デジタル住民が考える山古志村のための「事業プラン」 を募集していました。集まった事業プランのうち、デジタル住民の投票によって選ばれた事業プランに対して、NFTの売上から活動予算を充てる…という流れです。「第一回 山古志デジタル村民総選挙」では、12件の事業プランの中から、実際に予算をつけて活動していく4件を選定するために、Snapshotが使用されています。ここでは、保有するNFTが投票権として機能しました。
🎏山古志デジタル村民総選挙🎏
— Nishikigoi NFT ~yamakoshi~ (@nishikigoiNFT) February 17, 2022
アクションプラン、少しずつ応募いただいてます😊✨
ありがとうございます(つд;)✨
いよいよ明日が締切💦
多くのデジタル村民のみなさんのアクションプラン✨
おまちしてます😊🎏✨ pic.twitter.com/r23c3U9IXJ
この「山古志デジタル村民総選挙」で選ばれたプロジェクトの1つには、「NFTを買い集めて村の財産作り」という事業があります。山古志村の共有財産としてNFTを保有し、山古志村のために活用しよう!…というプロジェクトです。
ここでは、具体的にどのNFTを購入するのがよいか、候補となる9つのNFTプロジェクトの中から、デジタル住民の投票で決定しました。もちろん、投票にはSnapshotが使用されており、「NISHIKIGOI」NFTが投票権として機能しました。
📢まもなく投票開始‼️‼️🎏🎏
— Nishikigoi NFT ~yamakoshi~ (@nishikigoiNFT) June 3, 2022
2 月の総選挙で選ばれたデジタル村民プロジェクト!
リアル山古志×デジタル村民の共有財産をつくることを目指しています!
🔥「山古志DAO」の共有財産NFTを選ぶ投票🔥
✅期間:6/4㈯0:00~6/5㈰24:00
✅投票はこちらから👇👇https://t.co/5kMnrjbBbX#nishikigoINFT https://t.co/Qf3UUJ8cmk
少し本筋とは離れますが、候補として選定された9つのNFTプロジェクトを分析したシートは、ぜひ見ておいた方が良いです。それぞれのNFTコレクションの特徴と、それらを山古志村が持つ意義をまとめたシートは、「運営体がNFTを保有する際に、どんな点を考慮して選ぶのか」といった目線を知ることができて、とても勉強になります。
山古志村 NFT購入候補リスト(Googleスプレッドシートが開きます)
Snapshotで投票所をつくってみたい
ここまでの流れで、Snapshotがどんなものなのか、実際に使用されたユースケースについても知ることができたと思います。ここからは、「1つのNFT」=「1票」として投票ができる仕組みの作り方について、私が試行錯誤しながら理解できた「Snapshotの使い方」を紹介させていただきます。
1人のドーナツ部長が、1票に相当する…そんな投票所を作ってみたかった、それだけのことです。しかし…もしかしたら、今後のコレクション運営に関する方針や意思決定を、部長ホルダーに委任する可能性も出てくるかもしれません。その時に備えて、使えるようにしておきたい、そんな含みもあります。
NFTを持っていると投票できる仕組みの作り方
ここでは、私が実際に作成した投票所を元に、どんな風に実装したのかを説明しています。
準備するもの
①ERC-721で発行したNFT
OpenSeaで発行するNFTは、ERC-1155のため、独自コントラクトで発行する必要があります。今回は「Chocofactory」を使ってMINTしました。
②ENSネーム(Ethereum Name Service)
「〜.eth」を含むドメインです。Snapshotで投票所を開くために必要です。
今回は、「透明化した部長」でお馴染みの独自コントラクトでMINTしたコレクション「Transparent Wearable DONUTS」を用いて、投票所を作成しました。
透明になった部長1体 = 1票 として機能する投票所です。

【 STEP 1 】スペースを作成する
「スペースを作成する」を選択し、紐付けを行うENSドメインを選びます。
このとき、「ETHネットワーク」でメタマスクと接続されるのですが、ENSドメインとの紐付けに少量のガス代が必要となります。
※ガス代の目安:Gas Price Meter の値が「26」で、およそ500円程度でした。

【 STEP 2 】プロフィールを編集する(基本情報の入力)
続いて、スペース作成画面の「プロフィール」の入力を行います。アバターや名前、紹介文などを記載していきます。

【 STEP 3 】プロフィールを編集する(コントラクトの指定)
続いて、投票権として機能するNFTの情報を入力していきます。

・Network:NFTのネットワークと同じものを選びます。今回はPolygon-ChainでMINTしたNFTを用いています。
・Symbol:コントラクトを作成した時に指定した、Symbolを入力します。
※今回使用する「透明部長」のコントラクトでは、「Donuts」というSymbolを設定しています。
・Strategies:どんなロジックで投票を実装するのか、指定ができます。
※ここでは「erc721」を選択しています。
・Contract address:投票に使用するNFTコレクションのコントラクトアドレスを入力します。
※OpenSea上の「Details」から確認することも可能です。
【 STEP 4 】ウォレットアドレスと投票規則の入力
ここまできたら、あと少し!管理者となるウォレット情報、投票のルールに関する情報を入力していきます。

・Admins:スペースと提案の管理を行う管理者アドレスを指定します。
※自分のメインウォレットを指定しました。
・Authors:提案を作ることができるアドレスを指定します。
※自分のメインウォレットを指定しました。
・提案のバリデーション:提案を作ることができる条件を設定できます。
※提案は運営者から行う…としたいので「作成者のみ提案を提出可能」にチェックを入れました。
・投票:「Quorum」にて、提案が可決されるための最低投票数を設定できます。
※「投票結果を採択するための条件として、最低でも10票分の投票権の行使が必要」という場合には、10を入力します。
ここまでの流れで、設定は完了です。これで、「透明な部長」のNFTを持っている人だけが、投票できる仕組みを作ることができました。
※実際に作成したテスト投票所はコチラをご覧ください。
投票所を使ってやりたいこと
ドーナツ部長コレクションは、これを書いている2022/6/17時点で、169人の方に所有して頂いています。運営の方針に、ホルダーの意見を取り入れたいというのは、ごくごく自然な流れです。
わたし個人としては、新作の価格設定やデザイン、ロイヤリティをトレジャリー化して使い道を決定する…など、この活動をホルダーを巻き込んだものへとシフトしていきたいという想いがあります。「独自トークンを発行して、ホルダーのみなさんの投票により、意思決定を行う」といった取り組みにもチャレンジしてみたいのですが、不用意に手を出すと現行法に抵触する恐れもあり、気軽に行動を起こせない…というのが現状です。
そこで、保有するNFTをガバナンス・トークン的に使うことで、実装が可能であると考えました。
Snapshot上でERC-1155を組み込んだ「Strategies」を設定できれば、OpenSeaでMINTしたメインコレクション「Wearable DONUTS」の作品が投票権として使えるのですが、今回は簡単に実装できる手法を選択することにしました。クリエイターとホルダーのコミュニケーションの道具として、やがてはコレクション価値を高めるツールとしても使用可能であると考えています。
決して難しい設定ではないので、クリエイターの方はぜひ一度使ってみることをオススメします。