このドキュメントは、Zeneca @ZENECA メールマガジン「Letters from a Zeneca」"Letter 44: ThreadGuy, BoredElonMusk, Jack Butcher, and the Opepens"の内容を要約したものです。
イントロダクション
昨日・今日でのNFT市場における話題の中心は、「ThreadGuy」と「Opepen(オペペン)」でした。
※ThreadGuy氏:NFTのインフルエンサー
https://twitter.com/notthreadguy
※Opepen:NFTコレクション
「チェックマークのNFT」でお馴染みのJack Butcher氏が、pepeをモチーフとして制作したNFT。
多くの人々は、これをインフルエンサーの悪ふざけ、安っぽい青春ドラマ、詐欺的な手法の1つだとすぐに否定したがります。しかし私は、「Opepen」のストーリー自体が、クリエイター・エコノミーであり、Web3におけるアートを象徴するもので、個人の個性を活かしたブランディングの理想系だと考えています。
ここでは、「Opepen」に一体何が起こったのか、時系列で追いかけてみることにします。そして「Opepen」に起きた出来事が、決して「インフルエンサーに依存したムーブ」レベルの"低次元の話"ではないことを、ご覧いただこうと思います。
すべては、あるオファーから始まりました。
オファーを申し出たBored氏(@BoredElonMusk)は、アツいTwitterアカウントの1つであり、Opepenのクジラホルダーです。 オファーを持ちかけられたThreadGuy氏は、NFTのインフルエンサーであり、Twitterスペースを主催する人気のパーソナリティです。
Opepenとは?
「Opepen」を、ご存じない方のために説明すると…あの「Jack Butcher」(@jackbutcher)が生み出したプロジェクトです。元々はフリーミントのオープンエディションとして始まり、アートとネットカルチャーを象徴するムーブメントを起こしました。
※Opepenについて、もっと深く知りたい方は、このTweetをご覧ください。
制作者のJack Butcher氏といえば、Twitterの認証マークをモチーフにした「Checks VV」の制作者といえばピンとくる方もいるかもしれませんね。
ThreadGuyは数千万円を拒否し、あるものを選びました。
話を元に戻すと…Bored氏がオファーを申し入れた「001 Opepen」は、オファー時のフロア価格は約20ETHであったのに対して、交換相手に選んだ「MAYC」の当時のフロア価格は7ETH程度でした。
なぜ、Bored氏は、そのような取引を提案したのでしょう?
実質的には「13ETH」を捨てることと同じでは…?と思った方もいるのではないでしょうか。
ここで重要なのは、Bored氏が「700以上」のOpepenを保有する最大のクジラホルダーであること。彼は、この取引とThreadGuy氏が、OpepenをPFPとして使用することによって生まれる「注目」によって、フロア価格の差(13ETH)を埋め合わせる以上の価値が、Opepenに生まれることを期待していたと推測されます(結果として、市場の動きはその通りになりました)。
これは、もうひとつの重要なトピックスである「アテンション・エコノミー」の核心に迫るものでもあります。注目が生む経済に腹を立てて、世界や「最近のXXXXみたいな奴らめ!」と捨て台詞を吐くこともできるでしょう。しかし、目を見開いて、何が世界を動かしているのかを理解することもできるでしょう。
このベアマーケットの真っただ中において、私たちの「高値のJpeg」にバカげたオファーを出して楽しむ人がいたとして、一体なんの問題があるのでしょう?
ThreadGuy氏の持つMAYCへのオファーには、ついに…著名なBAYCホルダーも参戦し始めます。
あまりに荒唐無稽でバカバカしくなってきたと思いますが、もう少しお付き合いください。
多くの人間が非常識なオファーを出し、ThreadGuy氏は反応を示しました。しかし、最終的にはどの申し入れも断ったのです。しかし、この話はここで終わりではありません。
ThreadGuy氏がオファーを受け入れ、愛用してきたMAYCのPFPを変えるのか…注目が集まっていたのと同時に、ThreadGuy氏のMAYCをモチーフとした作品が次々と生まれていきます。そして、Opepenの生みの親「Jack Butcher」が、ThreadGuy氏のMAYC風のOpepenを投稿しました。
※この「ThreadGuy氏のMAYC風のOpepen」は、「Opepen Threadition」としてリリースされました。0.001ETHのオープンエディションとして、52,000体以上がMINTされています。
そして、たった数日間でより多くの人々が、自分のPFPを「ThreadGuyのOpepen」に変更し始めました。この流れを楽しむために、ミームのために、文化のために。
そして16時間後、本当のミラクルが起こります。
ThreadGuy氏は、自分のPFPを、「Jack Butcher」が自分のために作成したOpepenに変更しました。ThreadGuy氏は、ミームのため、アートのため、楽しむため、注目のため…色々な目論見があったかもしれませんが、最終的には「カルチャー」のために、MAYCをOpepenへと変更したのです。
それから43分。
「Jack Butcher」は、誰でも2ドルで 「Opepen Threadition」をMINTできるオープン・エディションを制作し、その収益すべてをThreadGuy氏へ寄付することを明らかにしました。
※「ThreadGuy氏のMAYC風のOpepen」は、「Opepen Threadition」としてリリースされ、0.001ETHのオープンエディションとして、52,000体以上がMINTされています。
【MINTはコチラから】
https://zora.co/collect/zora:0x6d2c45390b2a0c24d278825c5900a1b1580f9722/1
これは事前に計画されたものは、ありません。
この一連の流れに、疑いの目を向ける人もいました。無意識を演じつつ、流動性を引き出そうとする「組織的な陰謀」があるかのような見方を、いくつも目にしました。
しかし、これは決して、狙ったものでもなければ、組織ぐるみでもありません。
一言で言うなら…。
この「Opepenのストーリー」は、あるインフルエンサーが、自分のツイッター・ブランドとアカウントを(あのMAYC)を売り払わないことを選択し、数千万円の利益を拒否した話なのです。
その代わりに、彼はもっと美しいものを選びました。
そう、ミームです。
アートの1つになることを、彼は選んだのです。
ミームを知っていますか?
ミーム=Meme。ほとんどの人は知らないでしょう。
この言葉を発明した「Richard Dawkins」(リチャード・ドーキンス:『利己的な遺伝子』の有名な著者)によると…「ミーム」という言葉の正しい定義は下記のようになります。
「ミーム」とは、遺伝子に相当する文化的なものです。つまり、アクセントや基本的な単語、曲のように、脳から脳へと受け継がれるもの。伝染病のように、文化的な形で集団に広がっていくものです。つまり、学校での流行、洋服の流行、特定の話し方の流行、これらすべてがミームといえます。遺伝子が遺伝子プールの中で、より頻繁に使われるようになるのと同じで、ミームプールの中で、集団の中でより頻繁に使われるようになるだけで、進化プロセスの基礎となりうるものはすべてミームなのです。
つまり…ミームとは、文化の単位です。
多くの人がミームを誤解し、「ミーム=くだらない、ナンセンスなもの」と考えていることでしょう。しかし、ミームとは、我々がよく知っていて、愛しているものであり、それを早く理解すればするほど、世界の本当の姿が見えてくるのです。
このすべてを結びつけるものとして、ThreadGuy氏のために作られた「Opepen Threadition」は、結晶のような輝きを放ちます。この記事を書いている時点で、51,295枚がMINTされ、ThreadGuy氏には102,590ドルが支払われました。
特別な使い道もなければ、希少性もない。「Opepen Threadition」は、オープン・エディションであり、発行元と所有者を示すだけのものです。
しかし、私に言わせれば、この上なく美しい…そう思います。
少し余談になりますが、下記のErickによる長文Tweetは、今回の出来事に対して非常に的を射ている分析ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。
エンディング
このミームには、あのbeeple(@beeple)も加わりました。
「Opepen」には、多くの人々が飛びつき始め、ついにOpenSeaとraribleはPFPを変更しました。
誰もが、自分のブランドを「Opepen」にし始めたのです。
この業界や世界のあらゆる物事がそうであるように、誇大的なプロモーションは周期的にやってきます。人々は、いつものようにこの「イベント」で、短期売買での利益を狙いました。そして、その通りになりました。
この「Opepen」に起こった出来事の美しさに、もしあなたが「理解」できなくても、それでいいんです。誰もがすべてを理解する必要はないし、誰もがすべてに同意する必要もありません。
しかし、これらの出来事が展開されるのを実際に目撃した多くの人々に尋ねてみれば、分かるように。彼らは皆、この1週間がいかに美しいものであったかを語るに違いありません。