NFTの購入者に特典を配るには…?
2021年から盛り上がりを見せたNFT市場。2023年に入り、状況は大きく変化しています。「冬の時代」とも揶揄される通り、NFTの取引量は下がり、「出せば売れる」という時代は、既に過去のモノへとなりつつあります。
こういう時代だからこそ、NFTプロジェクトを運営する側にとって、最も重要なのは「目の前のNFTホルダーとのコミュニケーション」です。次から次へと新しいコレクションを立ち上げて、そのNFTのアローリスト(優先購入権)を付与すれば満足する時代は、終わりました。
NFTホルダーとのコミュニケーションとして、NFTを使うのか/使わないのかは、それぞれのプロジェクト次第だと思います。ここでは、「それがNFTでなければならない理由は?」と常に考える著者の思想に従い、「NFTを使ったコミュニケーション」の方法について、まとめてみたいと思います。
こんな方にオススメ
この記事では下記の方を対象として、2023年の現在におけるNFT保有者への特典配布の方法をまとめています。
- NFTプロジェクトを運営している事業者や個人クリエイター
- NFTの保有者に対して「保有者特典として、プレゼントを贈りたい」という運営者の方
- 自分が保有するNFTの運営者へ、「こんな特典が欲しい」いう提案をしたい方
- NFTホルダーとのコミュニケーション方法を模索している運営者の方
- コントラクトベースで特典を配布できる仕組みを実装したいエンジニアの方
まずは保有者のウォレットアドレスを取得する
まず必要なのが、誰が持っているのか、情報を集めることです。NFTの場合、匿名での取引になりますので、「誰が持っている」=「どのウォレットが持っているのか」と置き換えて考えます。
どのウォレットが持っているのか、特定する方法はいくつかあります(専用のツールを使う、手作業で集計する…)。大前提として、そのNFTが「独自コントラクトで発行されているのか」によって、その手法は大きく変わります。
独自コントラクトで発行されたNFTの場合
OpenSeaで発行したNFTでなければ、独自コントラクトである可能性が非常に高いです。
下記の画像のように、Token IDがユニークな場合、独自コントラクトのNFTと言えます。
※OpenSeaの共有コントラクトで発行したNFTは、コントラクトアドレスが2種類に限定されるため、コントラクトアドレスからも判断することができます。
ETH:0x495f947276749Ce646f68AC8c248420045cb7b5e
Polygon:0x2953399124F0cBB46d2CbACD8A89cF0599974963
これが、OpenSeaの共有コントラクトのアドレスとなります。
独自コントラクトで発行されたNFTであれば、以下の手順で保有者のウォレットアドレスを簡単に集めることができます。
ここでは、「2071年のドーナツ部長」のNFTを例に、手順を解説します。Etherscanへアクセスしたら、「TOKEN TRACKER」を選択します。
※「TOKEN TRACKER」に記載されているNFTが、このコントラクトで発行されたNFTであることを確認するようにしましょう。
画面が、NFT単位(トークン別)のEtherscanに変化しました。
この画面では、コントラクトの関数を通して、様々な処理を行うことができます。MINTサイトを経由しないで、直接コントラクトの関数からMINTすることを「直コン」なんて言いましたが、まさに「直コン」はEtherscanの画面から行うことができました(直コンできないように、制限をかけることが普通です)。
続いて画面下部にある「CSVダウンロード」ボタンを押します。
ここでは、目的にあったデータを出力することが可能です。今回の場合、そのNFTを誰が持っているのかが、欲しい情報となりますので、「NFT Holders(ERC-721&ERC-1155)」となります。
また2列目には、対象となるNFTのコントラクトアドレスを入力する欄があり、コントラクトアドレスを事前にコピーしておく必要があります。
「DOWNLOAD」を押すと、対象のNFTを保有するウォレットアドレスのリストでGETすることができます。
下記は、「2071年のドーナツ部長」を保有するウォレットの一覧です。
※ご購入頂いた皆様、本当にありがとうございます。
ここで題材にしている「2071年のドーナツ部長」というNFTがどんなNFTなのか、気になった方は、ぜひコチラをご覧ください。
共有コントラクトで発行されたNFTの場合
独自コントラクトで発行されたNFTは「Etherscan」を使うことで、簡単に所有者のウォレットアドレスを一覧化することができました。では…OpenSeaで発行された共有コントラクトの場合はどうでしょうか?
残念ながら…さきほどのような便利な出力方法は、ないんです。ツール化されている可能性もありますが、手軽に使えるサービスをいまだ、聞いたことがありません(もし、ありましたら…私が使いたいので、ぜひ教えてください!)。
つまり、1つ1つのNFTを確認して、所有者のウォレットアドレスを記録するしか方法がないんです。
これが、独自コントラクトと共有コントラクトの大きな違いです。この「ぬるぺでぃあ」の至る所で発信していますが、「ドーナツ部長を独自コントラクトにしたい」という意味が、ここにあります。
※ちなみに…「ドーナツ部長」は共有コントラクトで発行されたコレクションです。ホルダー様へ何度か、NFTを一斉配布したことがありましたが、もちろん手作業でウォレットアドレスを拾い上げています。
NFTの所有者へ配布できる特典(コミュニケーションの方法)
「誰がNFTを持っているのか?」という情報が分かれば、次はそのウォレットに対して、「何が提供できるのか?」を考えてみましょう。
下記に挙げるのは、ほんの一例であり、どれも私自身が「ドーナツ部長」を通じて実施してきた内容となります。
NFTの保有者だけがアクセスできるURLリンクを作成する
この方法が、最もメジャーでよく見かけるパターンかもしれません。
これは、トークンゲートと呼ばれるサービスと組み合わせることで、簡単に実装できます。オススメは「Unlash」というサービスで、NFT配布ツールでおなじみの「Spread」関連のツールとなります。
「ドーナツ部長」でも、Unlashを使って、さまざまな特典をご用意しています。
※コチラのリンクより、部長ホルダー向けの特典ページへ飛ぶことができます。
この方法で何ができるのか?考えてみましょう。
- NFTの所有者だけがアクセスできるブラウザゲームを作り、所有者を招待する
- スタンドFMで限定配信を収録し、NFTの所有者だけが聴くことができる「特別放送」を設定する
- 「限定価格」に価格を変更したグッズ販売のページを作り、NFTを持っている方だけが安く買えるショッピングサイトとしてリリースする
- Googleフォームなどと組み合わせることで、フィジカルグッズの発送やオフ会の出欠を取ることも可能です
自省の意味も込めて、記載をしておくと…これらは全て、NFTの所有者側にアクションして頂くことになるので、コミュニケーションとして成立させるためには、入ってみた/使ってみた感想をTweetなどで発信して頂く必要があります。「ハッシュタグ」を使ったキャンペーンなどと絡めて、「限定アクセスできる場所へ入ってみて、どうだったのか?」をつぶやいてもらえる工夫も必要ですね。
NFTの保有者だけが購入できるNFTを作成する
これも非常にシンプルです。独自コントラクトで手軽にNFTを発行できるプラットフォーム「Thirdweb」や「Manifold」を使うことで、AirDrop(運営が配ること)もMINT(所有者が申請して受け取ること)も、どちらも可能です。
特別なNFTとして、所有者自身にMINTして貰うのであれば、先ほどの「URL」方式でも実装は可能ですし、MINTできるウォレットアドレスを登録しておく、という方法もあります。
NFTの保有者だけが投票できる「投票所」を作る
この「投票」も、本サイト「ぬるぺでぃあ」ではよく登場するコミュニケーションの1つです。運営として、何か重要な決定をする場合に「ホルダーの意見を取り入れたい」と思うことがよくあります。そんなとき、アンケート調査をするのも方法の1つなのですが、せっかくなら「NFT」を使いませんか?…ということです。
所有するNFTの数量に応じて投票できるパワーが変わったり、だれが投票してくれたのか履歴が残ったり、NFTならではの意思決定と言えるかもしれません。
投票所の作り方は、コチラの記事で細かく解説をしています。
【番外編】購入者だけが閲覧できる「Unlockable Content」を使う
こちらは、ちょっと番外編です。OpenSeaの共有コントラクトで発行する場合のみに使える方法となります。
OpenSeaの「Unlockable Content」と呼ばれる、秘密の言葉を隠しておける機能を使って、購入者だけがアクセスできるコンテンツを作り上げています。
「ドーナツ部長」では、この「Unlockable Content」に、部長が着ている服のサイズ/色/ブランド名を細かく記載しています。
まとめ
このような方法でウォレットアドレスさえ取得できれば、様々な形で特典を送ることができる、または用意することができるようになります。プロジェクトの運営者の方であれば、サイト制作に費用をかけて、サイトの中に「NFTを認証する機能」を実装することも、選択肢の1つになります。
ホルダーとのコミュニケーションが、今後ますます重要になっていきますので、「NFTを使ってどんなことができるのか?」を一緒に考えていきましょう。面白いアイデアがあれば、ぜひぜひ教えてください。